Music | 酔いどれホーボーになるまえに
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    16.『ハンガー』(1983年)×ドリーブ「歌劇『ラクメ』より花の二重唱」
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      1983年のトニー・スコット監督の初監督作品『ハンガー』(原題 The Hunger)は、女性同士のセックスシーンなどもあってカルト的な人気を博すようになった快作だ。タイトルの「ハンガー」は「渇望」や「飢え」を意味する。原作は、ホイットリー・ストリーパーの『ウルフェン』である。

      深夜のニューヨーク。クラブで若者を誘うミステリアスな男女ひと組。女は、ミリアム(カトリーヌ・ドヌーヴ)という名の、何世紀以上もの時を生きる吸血鬼。彼女は時代ごとの愛する人間を見つけ、不老不死の血と永遠の美を与え、その人を伴侶にしてきた。そして彼女が18世紀に見いだしたのがジョン(デヴィッド・ボウイ)であり、その男が彼女の現在の伴侶だ。

      瀟洒な館で美と贅の限りをつくして生きていた2人だったが、ジョンに老化の兆候が現れはじめる。彼は老化現象について研究している医師のサラ(スーザン・サランドン)を訪ねるが、真剣に取り合ってもらえず、彼は急速に容貌が衰えていく。一方ミリアムのほうは、先の見えたジョンの後釜として、サラに関心を抱き、急接近していく。

      1983年4月公開だから、ドヌーヴ39歳、サランドン36歳。この女性2人によるラヴシーンが描かれるのだ。とくに、サランドンの乳首はピンと立っていて、たまらなくセクシーな魅力を振りまいている。美しいヌードだ。

      ここで流れるのが、レオ・ドリーブの歌劇『ラクメ』より「花の二重唱(ディエット)」。映画の冒頭で、イギリスのグラムロックバンド、バウハウスの『ベラ・ルゴシの死』が使われた本作は、ラヴェルの『夜のガスパール』よりピアノ曲「絞首台」や、シューベルト「ピアノ三重奏曲第2番」など、クラシックのピアノの名曲が数多く使われている。

      この映画でも、最初はカトリーヌ・ドヌーヴ演じるミリアムが、インドの王女ラクメと次女のマリカの物語であることをピアノをポロンを弾きながら説明する。サーザン・サランドン演じるサラが「これはラブソングなの? ラブソングみたいに聴こえるわ」と意味深なことをつぶやき、裸になってラブシーンになだれこむ。女性同士のラブシーンに、女2人による「花の二重唱」は実にハマっている。

      トニー・スコット監督はこの曲がよっぽど好きと見えて、チャーリー・セクストンの軽快なロックサウンドで始まる10年後の『トゥルー・ロマンス』(1993年)でも、男2人のクリストファー・ウォーケンとデニス・ホッパーのシチリア話のくだり(脚本はクエンティン・タランティーノで、エルモア・レナードの熱狂的ファンであるタランティーノが『グリッツ』からの一節を引用したのだろう)で、この「花の二重唱」を使っている。

      歌劇『ラクメ』は、レオ・ドリーブが作曲した3幕のオペラで、1883年にパリの国立オペラ・コミック劇場で初演された。この曲は19世紀末に流行していた東洋的な雰囲気を描写した作品である。

      中でも「花の二重唱」は大人気で、ブリッティシュ・エアウェイズのコマーシャルをはじめ、上記の『ハンガー』や『トゥルー・ロマンス』のほかにも、『カリートの道』(1993年)、『ミート・ザ・ペアレンツ』(2000年)、『トゥームレイダー2』(2003年)、『スーパーマン・リターンズ』(2006年)、『ハムナトラ3/呪われた皇帝の秘宝』(2008年)などにも使われている。

      | mou1234 | 12:00 | comments(0) | - |
      15.『アイズ・ワイド・シャット』(1999年)×ショスターコーヴィッチ「ジャズ組曲」
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        1999年のスタンリー・クブリック監督の遺作となった『アイズ・ワイド・シャット』は、1926年に出版されたアルトゥール・シュニッツラー(1862-1931、『輪舞』の作者である)の中編小説『夢小説』が原作だ。

        クーブリック監督は1999年3月2日、当映画の0号試写会の5日後の3月7日に心臓発作をもとで急死する。原題の「Eyes Wide Shut」とは「大きく見開いた目」のことであり、彼の心臓発作を暗示しているかのようだ。

        ビル・ハーフォード(トム・クルーズ)と妻アリス・ハーフォード(ニコール・キッドマン)は倦怠期を迎えた夫婦(ハーフォードは「ハリソン・フォード」のもじりであるらしい)で、ビルが夜のニューヨークを彷徨って秘密の乱交パーティーに参加したり、いろいろした挙げ句、夫婦の絆を確かめ合うために「ファック(セックスをすること)」が大事なことであるという帰結に落ち着く。

        数々の名作を残してきたクブリック監督の遺作である本作の最後のセリフが、ジョン・カサヴェテス監督の『こわれゆく女』(1974年)同様に、「ファック」であることに笑いがこみ上げる。

        トム・クルーズとニコール・キッドマンの夫婦はハリウッドでは誰もが羨むおしどり夫婦で、2人は『遥かなる大地へ』(1992年)以来2度目の共演作だった。作品は夫婦の嫉妬をテーマにしたものであり、2人は完璧主義者クーブリック監督の撮影に集中しようとして、イギリスに1年移住した。撮影は1996年11月から始められたが、クーブリック監督の意思により秘密裏に進められたため、その内容は外部へまったく漏れなかった。1998年4月まで延々と、撮影は46週間、400日以上に及ぶ「撮影期間最長の映画」としてギネスブックにも記録されている。結局、家を空けまいとするニコールとトムとのあいだに軋轢が生まれ、このおしどり夫婦の離婚の原因になったといわれる。

        冒頭からニコール・キッドマンのキレイなお尻(お尻の上にはこれまたキレイなディンプルがある)に魅了されるはずだ。公開当初はクブリック監督が自ら語った「この作品が私の最高傑作だ」という言葉がひとり歩きし、広く流布された。

        クラシック音楽を使うことには長けていた巨匠スタンリー・クーブリックが何を使うのかは、映画ファンにとっての最大の関心事だった。

        それは、ドミートリイ・ショスターコヴィッチが1938年に作曲した、ソ連(現ロシア)におけるジャズの普及を目的としたオーケストラのための組曲「ジャズ組曲第2番」だった。

        交響曲や弦楽四重奏曲というジャンルにおいては、戦争などをテーマにした暗く重い作品を多く残したショスターコーヴィッチだが、この曲は同じ作曲家の曲とは思えないほど軽妙さがあり、彼の意外な一面を映し出している。「ジャズ」と名前に付いているが、ズン・チャ・チャというワルツ形式のダンス音楽に近い。この第2番は、戦争によってオーケストラの楽譜が消失し、2000年にピアノ総譜が発見されるまで、その内容は謎に包まれていたのだ。イギリスの作曲家ジェラルド・マクバーニーによってオーケストレーションが行われ、2000年9月9日に初演された。

        その前年の『アイズ・ワイド・シャット』にスタンリー・クーブリック監督は使ったのだから、先見の明があるといえようか。

        | mou1234 | 16:26 | comments(0) | - |
        14.『レイジング・ブル』(1980年)×マスカーニ「『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲」
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          1980年のマーティン・スコセッシ監督の『レージング・ブル』(原題 Raging Bull)は、ボクシング好きにはたまらないタイトルシークエンスから始まる。試合前のプロボクサー、ジェイク・ラモッタがシャドーボクシングなんかをしたりする。

          このオープニングシークエンスで流れるのが、ピエトロ・マスカーニ作曲の「歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲」である。

          この場面で、ご両親がシチリア島出身のイタリア系アメリカ人、スコセッシ監督は自分が子どものころのレコードを、音楽担当のロビー・ロバートソン(元ザ・バンド)に探させたらしい。イタリア系アメリカ人にとって「心の故郷」のような音楽なので、フランシス・フォード・コッポラ監督作品『ゴッドファーザー PARTIII』(1990年)のシチリアの歌劇場の階段でのメアリー・コッポラ(ソフィア・コッポラ)の悲劇的な死の場面へとつながっていく。

          またロバート・デ・ニーロが演じた主人公ジェイク・ラモッタは、ニューヨークのスラムに生まれ、父がイタリア系、母がユダヤ系という2つのマイノリティ民族の血を引く少年であり、生きることは絶え間のない戦いの連続だった彼もまた、少年時代に聴いていた音楽だったのだ。

          歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』は、ジョヴァンニ・ヴェルガによる小説を戯曲化、その戯曲に基づいてピエトロ・マスカーニが作曲した1幕物のオペラだ(1890年に初演)。題名は「田舎の騎士道」といった意味で、ヴェルガの出身地シチリアの山間部を舞台として貧しい人々の暮らしが描かれる。トゥリッドゥ(テノール)、ローラ(メゾソプラノ)、アルフィオ(バリトン)の、三角関係のもつれからくる決闘と殺人を描き、百花繚乱のように華開いた19世紀末のイタリアにおける「ヴェリズモ(リアリズム文芸運動)・オペラ」のはじまりをなすものとされる。

          演奏時間は70分ほどでオペラとしては短い。1幕物の舞台にちょうど中間に間奏曲は入るが、場面転換はない。この間奏曲は美しい旋律で、歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』を作曲する前からこのメロディーを考えついていた。

          ジェイク・ラモッタは、完全無欠なボクサー、シュガー・レイ・ロビンソンの全盛期に土をつけたただひとりのボクサーである。40戦無敗を続けていたシュガー・レイに10回判定勝ちをおさめ、その21日後に10回判定で借りを返すと、以後92戦無敗を通す。つまり、この史上最強のボクサーは132試合戦ってラモッタにしか負けなかった。

          世紀の大金星をあげたラモッタは、およそ見栄えのしないボクサーで、ずんぐりむっくりのリーチの短いボクサーだった。そんな彼が、デビュー当初はヘビー級で戦ったという身体の「太さ」が底知れぬスタミナと信じがたいタフネスさを生んだ。彼は顔面パンチをフェイントに使いながら、ロープに詰めて乱打をボディーに見舞った。いつしか人は彼を「ブロンクスのレイジング・ブル(怒れる猛牛)」と呼んだ。

          この映画は、『グッドフェローズ』(1990年)のヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)、『アビエイター』(2004年)のハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)のジョーダン・ベルフォード(レオナルド・ディカプリオ)同様に、主人公ジェイク・ラモッタの転落の人生を描いている。そう、スコセッシ監督は落ち目の人生にしか興味がないのである。

          この映画から盟友セルマ・スクーンメイカーが編集技師を務め、以後のスコセッシ作品の編集テクニックを決定づけた。
          | mou1234 | 10:38 | comments(0) | - |
          13.『バスキア』(1996年)×トム・ウェイツ「トム・トルバーツ・ブルース」
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            1996年のジュリアン・シュナーベル監督作品『バスキア』は、バスキア本人と親交があったアーティスト仲間のシュナーベルが監督したものだ。わずか27歳で亡くなったアーティスト、ジャン=ミッシェル・バスキア(ジェフリー・ライト)の伝記映画だ。バスキアとバンドを組んでいたヴォンセント・ギャロがカメオ出演したりと、いわくつきのキャスティングが施されている。

            この中で忘れられないのが、アーティストであるデヴィッド・ボウイ演じるアンディ・ウォーホルだ。銀髪のウィッグを付けて、時代の寵児アンディ・ウォーホルになり切っていた。実際のバスキアとウォーホルは1983年に出会い、共同制作をしたりしてお互いを刺激し合う存在になった。そして1987年、ウォーホルが死ぬと、バスキアは孤独を深め、徐々にヘロイン中毒になって妄想癖もひどくなる。そして1988年、ヘロインのオーヴァードーズにてわずか27歳で死去している。

            ウォーホルの死は、映画の後半のハイライトだ。バスキアは夕暮れのニューヨークの街をトボトボと歩いていて、画商のブルーノ(デニス・ホッパー)に呼び止められて、「ウォーホルが死んだ」ことを教えられる。それからしばらく、とても感傷的にモンタージュされる。そこで流れるのが、トム・ウェイツのバラード「トム・トルバーツ・ブルース」、原題はTom Traubert's Blues(Four Sheets to the Wind in Copenhagen)である。

            この曲は、全曲トム・ウェイツが作曲した、1876年9月に発表された3枚目のアルバム『スモール・チェンジ』に第1曲目に収録されたバラードで、唐沢寿明主演のフジテレビ開局50周年ドラマ『不毛地帯』のエンディングにも使われた。ロッド・スチュワートらにもカバーされている。表題にもあるトム・トルバーツは、トムの「友人の友人」で、獄中で死んでしまった人らしい。

            最大の特徴は、あのアルコールとタバコで声を潰してしまったかのようなあのダミ声だ。一度聴いただけで、トム・ウェイツの声だとわかる。壮大なストリングス・アレンジはジェリー・イェスターによるもので、トム・ウェイツのピアノの弾き語りが哀切きわまりない。

            歌詞のサビの部分には、オーストラリアの第2の国歌といわれるフォークソング「ワルチング・マチルダ」の一節が引用されている。その歌詞は、あてのない旅をする旅人が1頭の羊を泥棒し、警察に追い詰められた旅人は池に身を投げ自殺するという悲しいストーリー。「ワルチング・マチルダ」とは「ワルツを踊るマチルダという女性」ではなく、「当てもなく彷徨う放浪者が持ち歩くズタ袋」という意味らしい。歌詞を訳するのはとても難しく、理解するのは難しい。しかし、その歌詞に登場するのは、タクシー運転手、車椅子の老人、ストリッパー、酔っ払い、清掃人、夜間警備員、野良犬といった社会の底辺に生きる人たちであり、彼らにおやすみと暖かく声をかけるトム・ウェイツのやさしさに感動してしまう。そんな「酔いどれ詩人」らしい詞の内容なのである。

            映画の中のウォーホルの存在があまりにもデカすぎて、まさしく巨星墜ちるという感じだった。バスキアを照らす大きな月(けっして太陽ではなく、月である)がいなくなったという感じで、その落胆や空虚感をその音楽が表現していた。

            シュナーベルはかなり耳のいい監督で、『バスキア』に使われた音楽は、コンピュレーションアルバムとしてもよく出来た選曲だった。「トム・トルバーツ・ブルース」以外にも、ザ・ポーグス「サマー・イン・シャム」や、ジョン・ケイル「ハレルヤ」(曲はレナード・コーエン)などはいまもしょっちゅう聴いている。

            | mou1234 | 22:27 | comments(0) | - |
            12.『ミラル』(2010年)×A・R・ラフマーン「ムンバイ・テーマ・トゥーン」
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              『夜になるまえに』(2001年)や『潜水服は蝶の夢を見る』(2007年)の2010年に撮ったジュリアン・シュナーベル監督作品『ミラル』は、イタリアで活躍するイスラエル出身の女性ジャーナリスト、ルーラ・ジブリールの自伝的小説(脚本も担当)を映画化したヒューマンドラマだ。ユダヤ人のシュナーベル監督は、私生活でも原作者のジブリールと国際結婚(3度目)した。

              イスラエル占領下のパレスチナを舞台に、私財を投げ打って、孤児たちのための学校を創設し生涯を教育に捧げたヒンドゥという女性の信念と、そこで学んだ美しい少女ミラルの数奇な運命を中心に、イスラエルに生きる4人のアラブ人女性の過酷な人生と微かな希望を力強いタッチで描き出す感動作だ。原作者ジブリールの半生は表題にもなったミラルの人生に投影されている。

              とにかく、ヒンドゥ・フセイン役の『シリアの花嫁』(2004年)『ミュンヘン』(20005年)『扉をたたく人』(2009年)のヒアム・アッバスと、ミラル役の『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)『猿の惑星・創世記(ジェネシス)』(2011年)のフリーダ・ピントの演技が圧巻だ。さらに、『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2003年)『オン・ザ・ロード』(2012年)の撮影エリック・ゴーティエのキャメラが、イスラエル/パレスチナの戦争不可避な現実を見つめていて、感動が湧き上がる。

              この映画のテーマ曲として使われるのが、『スラムドッグ$ミリオネア』の音楽を担当したA・R・ラフマーンが作曲した『ムンバイ・テーマ・トゥーン』。3〜4機のジェット機で編隊を組んで、けたたましく鳴り響いては上空をつんざき、3〜4度ほど戦争が到来したことを告げる。


              「ムンバイ・テーマ・トゥーン」はラフマーンらしいストリングスが効いた壮大な交響詩で、実に映画『ミラル』にマッチしている。

              現代の中東の歴史は、日本人にとってなかなか理解できない。とくにイスラエルの歴史は、お手上げだ。1948年に建国されたイスラエルは、国連の決議によって勝手に地理上で線引きされた国家であり、その地にはすでに数多くのアラブ人(パレスチナ人)が住んでいたので、紛争が絶えないわけだ。

              映画は、イスラエルを国家として、PLO(パレスチナ解放機構)を自治政府として、相互に承認した1993年の「オスロ合意の締結」と、1994年の「ヒンドゥ・フセインの葬儀」でしめくくられる。しかしパレスチナの和平はいまだに成立していない。この物語を、ユダヤ人であるシュナーベル監督が中立的立場で描くことに深い意義がある。

              | mou1234 | 22:21 | comments(0) | - |
              11.『ディパーテッド』(2006年)×ローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」
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                2006年の『ディパーテッド』(原題 Depated)は、香港映画『インファナル・アフェア』(2002年)のリメイクである。リドリー・スコット監督作品『キングダム・オブ・ヘブン』(2005年)の脚本を手がけた、マサチューセッツ州ボストンに在住の脚本家ウィリアム・モナハンが脚色、「無冠の名監督」といわれていたマーティン・スコセッシ監督は、アカデミー監督賞を受賞した。外国語映画のリメイク作品として、史上初のアカデミー作品賞も受賞した。原題の「The Derarted」とは「分たれたもの」、転じて「身体から離れた死者の魂」を意味する。実はスコセッシ監督がオスカーを受賞した直後に、来日した彼をインタビュ―している。彼は開口一番、「こんなリメイク作品でオスカーを獲りたくはなかった」とその複雑な胸中を吐露してくれたのだ。

                マサチューセッツ州ボストン南部、通称「サウシー」が物語の舞台だ。警察はこの街の犯罪を撲滅しようと、最終戦争に突入しようとしていた。標的は、アイルランド系ギャング組織のボス、フランク・コステロ(ジャック・ニコルソン)で、その支配力を内部から崩そうと、新人警官のビリー・コスティガン(レオナルド・ディカプリオ)を組織に潜入させる。一方、コステロも、新人警官のコリン・サリヴァン(マット・デイモン)を送り込んでおり、警察の捜査は筒抜けになっていた。お互いの素性を隠して潜入生活を続けるビリーとコリンだったが、やがて警察もギャングも、内部に通報者がいることに気づき、その通報者を突き止めようとする。

                オープニングから「ギミー・シェルター」が流れる。このジャック・ニコルソン演じるフランク・コステロの登場のテーマのようにして流れるわけだ。彼は携帯電話の着信音(音が意外とデカい)も、古いアイルランドの愛国唱歌「The Minstrel Boy」だったりして、骨の髄までアイルランド系である。

                ローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」は、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの作曲した1969年のアルバム『レット・イット・ブリード』に収録された。女性歌手メリー・クライトンがバッキングヴォーカルとして参加している。キース・リチャーズのカッコいいリードギターのリフで始まるローリング・ストーンズらしい曲だ。

                マーティン・スコセッシ監督はよっぽど好きらしく、この曲はヘンリー主人公ヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)がコカイン中毒になるテーマ曲として『グッドフェローズ』(1990年)や、ニッキー(ジョー・ペシ)のテーマとして『カジノ』(1995年)でも使われている。

                なぜ、「ギミー・シェルター」を使うのか、スコセッシ監督に尋ねたことがある。
                「前に使ったことも忘れて、ついつい1969年のプレイリストから選んでしまうんだ」
                パーク・アヴェニューにあった前のオフィス、カッパ・プロダクションズ(今はシケリア・プロダクションズ)にしか行ったことがないが、マーティン・スコセッシ監督は本国アメリカでiPhone4のSiriのCMのイメージキャラクターにも登場するほどだ、しかし、iPhoneの操作は事務所の女の子に任せっきりなのだ。それで、楽曲の制作年代ごとにプレイリストに入れてもらっているのだが、1969年のプレイリストからローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」は選ばれるわけだ。

                『レイジング・ブル』(1980年)以降の劇映画の編集は『ウッドストック』(1970年)から断続的に一緒なセルマ・スクーンメイカー女史が編集をやっているが、『ボブ・ディラン/ノー・ディレクション・ホーム』(2005年)、『ローリング・ストーンズ/シャイン・ア・ライト』(2008年)、『ジョージ・ハリソン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』(2011年)といった音楽ドキュメンタリー映画の編集は、彼が「第3の演出」だと述べている編集作業を、すべてデヴィッド・テデスキがやっている。
                しかし、『シャイン・ア・ライト』では「ギミー・シェルター」が使われなかった。

                | mou1234 | 22:14 | comments(0) | - |
                10.『救命士』(1999年)×ヴァン・モリソン「T. B. シーツ」
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                  1999年の『救命士』(原題 Bringing Out the Dead)は、ジョー・コネリーの原作小説を脚本家ポール・シュレイダーが脚色したもので、この映画のオープニングに使われた曲が、北アイルランドのロック歌手、ヴァン・モリソン「T. B. シーツ」だ。

                  夜のニューヨーク。救命士のフランス・ピアース(ニコラス・ケイジ)は、何ヶ月もの間、緊急搬送する重篤患者を救えずにいた。そんな毎日が彼に重くのしかかり、彼は心身ともに喪失してしまう。そんなある夜、彼は、心肺停止から蘇生した父親を献身的に介護していたメアリー・パーク(パトリシア・アークエット)という女性と出会い、フランクは人生に希望を見い出すが、つらい現実は彼の前に立ちはだかる。

                  ニコラス・ケイジとパトリシア・アークエットは、1995年から2001年まで夫婦だった。この映画撮影当時は、おしどり夫婦だと見られていた。

                  「T. B. シーツ」は、ヴァン・モリソンの1967年のソロファーストアルバム『ブロウイン・ユア・マインド』に収められた9分の大作だ。ヴァン・モリソンはザ・バンドの解散コンサートを収めたドキュメンタリー映画『ラスト・ワルツ』(1976年)にも出場しているロック歌手(シンガー・ソングライター)で、いわゆるマーティン・スコセッシ監督のお気に入りの歌手だ。高い音楽性と抜群の歌唱力で、多くのミュージシャンから尊敬を集める。また極度のマスコミ嫌いで、彼の飛行機嫌いで国外に出ることが非常に少ないことから、バーブラ・ストライザンドなどと並んで、「日本に来日したことがない大物歌手」のひとりといわれる。若いころは北アイルランドのベルファストに住み、1964年から1966年、「グロリア」などのヒット曲を飛ばしたロックバンド、ゼム(Them)の一員だったが、脱退。1967年拠点をニューヨークに移し、ソロに転向。バング・レコードと契約。この曲は、彼のニューヨーク・シティ時代の、A&Rレコーディングスタジオで1967年3月28日に録音されたものだ。どおりで、ニューヨークが似合うわけだ。
                  2013年、彼はあの「ローリング・ストーン」誌が選ぶもっとも偉大なシンガーの第24位に選ばれている。1993年、ロックの殿堂入りを果たしている。

                  「T. B. シーツ」はハモンドオルガンとハーモニカ(ブルースハープ)が織りなすブルースフィーリングあふれるブルー・アイド・ソウルの名曲で、ヴァン・モリソンをアメリカに誘ったバート・バーンズのプロデュースによる貴重な音源をもとに制作された。録音が終わったヴァン・モリソンは感情が高ぶって、泣き崩れたというエピソードが残っている。

                  実は、ポール・シュレイダーが、ドストエフスキー『地下室の日記』とサルトル『嘔吐』をアレンジして主人公トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)の孤独をテーマに書いた『タクシードライバー』(1976年)の脚本を、マーティン・スコセッシ監督がリライトしていたとき、この曲をよく聴いていたらしい(『タクシードライバー』のDVDのコメンタリーにある)。まだ、バーナード・ハーマン(『タクシードライバー』が遺作になった)にスコア音楽の作曲を依頼する前の話だ。なるほど、『タクシードライバー』の夜のニューヨークの情景と実にマッチしていて、代わりに聴いてもテーマ曲の趣すらある。

                  映画『救命士』はゾンビのような者がニューヨークの夜の街にあふれかえり、クライマックスを迎える。だが、それは、イタリア・ローマのシスティナ礼拝堂にあるミケランジェロが描いた祭壇壁画『最後の審判』(フレスコ画)にて似て、ダンテ『神曲』地獄編のイメージを借りたものだ。

                  | mou1234 | 22:09 | comments(0) | - |
                  9.『花様年華』(2000年)×梅林茂「夢二のテーマ」
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                    2000年のウォン・カーワァイ監督の『火様年華』(英題 In the Mood for Love)は、悲痛なラブストーリーである。主人公は、男がチャウ(トニー・レオン)で、と女がチャン夫人(マギー・チャン)。2人が好き合っているのに、叶わぬ恋は美しいとする香港映画だ。
                    原題の「花様年華」は「花のような時間」という意味で、そこから転じて「満開の花のように成熟した女性が一番輝いているとき」を示している。
                    確かにここでのマギー・チャンは、とてつのなく美しい。付け加えると、マギー・チャンの役柄から、同じカーワァイ監督作品の中で、『欲望の翼』(1990)の続編、『2046』(2004)の前編といわれている。

                    1960年代の香港が舞台で、物語の発端は、家探しをしている男女が偶然隣り合わせの部屋を借りることになるというものだ。偶然にも、同じ日に引っ越ししたりして、荷物の取り違えが起きたりする。アパートの階段は男女がすれ違うには狭すぎ、2人は次第に昵懇(じっこん)になっていく。会社の秘書として働いているチャン夫人は、いつも商用でいない不在がちな日本人の夫がいて、新聞記者のチャウ氏は、帰宅が遅い会社勤めの妻がいる。このチャン夫人の夫とチャウ氏の妻は絶対に姿を見せない。あるとしても、声のみの出演なのだ。

                    映画の前半、2人の「逢瀬のテーマ」として流れる音楽が、鈴木清順監督作品で、日本の梅林茂が作曲した『夢二』(1991)のテーマ曲「夢二のテーマ」である。
                    もちろんのこと、沢田研二演じる竹久夢二と女性たちの逢瀬を綴っていく。鈴木清純監督作品らしく、夢か現かわからない世界が描かれている。本作の音楽は、完璧に内容にマッチしていて、『花様年華』の2人のテーマ曲として聞いても全然間違いじゃない。

                    カーウァイ監督はよほど感性の鋭い人であるから、『夢二』を観たとき、直感で感じるものがあったに違いない。でなければ、すでに他の映画のテーマ曲として使われた梅林茂の音楽を、わざわざ自分が丹精込めた新作映画のテーマ曲に選ぶはずがない。

                    この曲を聴くと、いくどとなく降る雨と、時を刻む大きな時計と、トニー・レオンの佐田啓二のような髪型と、彼のタバコの紫煙と、マギー・チャンが着る上海灘(シャンハイタンShanghai Tang)のチャイナドレスと、そのチャイナドレスのスリットから時折のぞく美脚と、そして料理が苦手な彼女がラーメンを買いに行ときな持参するペパーミントグリーンのジャー(ラーメンを入れる容器)しか思い出さない。キャメラ(撮影はクリスファー・ドイルとリー・ビンビン)は、回廊のような香港の街並を漂うだけだ。しかし、おもしろいことに2人の物語なのに、キャメラはまったく2人の部屋にも侵入しないのだ。
                    大きな時計が映っても1960年代という時代設定しかわからない。この「夢二のテーマ」が完全に時を止めてしまったかのようだ。それだけに、2人の会話はかなり無意味だ。チャウ氏のセリフにこんなものがある。「次第に君への思いが募る。冷静なつもりが、君の夫が戻ると思うと、無性に腹立たしくなる」。それが返って、かなりエロティックに聴こえる。

                    ところが第2部、映画の後半になると、調子は変わる。物語は、正確に時を刻み始めるかのようだ。
                    流れる曲は、ナット・キング・コールの「キサス・キサス・キサス(Quizas, Quizas, Quizas)」や「緑の瞳(Aquellos Ojos Verdes)」や「月光の魔術(Te Quiero Dijiste)」といったラテン音楽の名曲の数々が流れる。時代錯誤的な音楽が、返って現実的な時間(世界)へと引き寄せるわけだ。

                    本作はおもしろいくらいに、音楽が物語を物語る、稀有な例といえる。

                    | mou1234 | 22:03 | comments(0) | - |
                    8.『タイタンズを忘れない』(2000年)×マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」
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                      2000年のジェリー・ブラッカイマー製作、ボアズ・イェーキン監督の『タイタンズを忘れない』(原題 Remenber The Titans)は、公民権法施行後も人種差別が渦巻く1971年に、教育改革によりヴァージニア州に生まれた白人黒人混合の高校アメリカンフットボールチームの選手たちが、「肌の色が違う」というだけでいがみ合いながらもスポーツを通じて互いに理解し合い、周囲の人々を巻き込みながら、奇跡を起こしていく感動のドラマだ。実話に基づくドラマで、主人公の黒人コーチをデンゼル・ワシントンが演じている。

                      1970年代のヒットした流行歌が効果的に使用されていて、スティームの「ナ・ナ・ヘイ・ヘイ・キス・ヒム・グッドバイ(Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye)」などとともに、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」が流れてくる。これは、試合後のロッカールームのラジオから流れてきて、白人選手と黒人選手の心をひとつにする文字どおり、チームをまとめる音楽であった。若き日のライアン・ゴズリングなどの姿が見える。

                      この曲は、R&Bソウルの名曲で、「レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド」「エイント・ナッシング・ライク・ア・リアル・シング」「ユア・プレシャス・ラヴ」などのヒットで知られるニコラス・アシュフォー&ヴァレリー・シンプソンの夫妻による楽曲で、モータウン・レーベルのために書き下ろしたものだった。最大の特徴は、とても覚えやすいメロディと実生活に根づいた歌詞にあった。デュエットに適した彼らのラブソングは、その魅力を発揮する。おもに、ニック・アシュフォードが歌詞を担当した。

                      1967年4月に当時パートナーの関係にあったマーヴィン・ゲイ&タミー・テレル(1970年3月16日、脳腫瘍のためわずか24歳で夭折)の男女デュエットがリリースされて大ヒット。マーヴィンとタミーは慕い合っていたが、タミー・テレルの最後のアルバム『イージー(Easy)』では、歌えなくなったタミーに代わり、ヴァレリー・シンプソンが代わりに歌ったのは有名な話だ。そして70年にタミー・テレルの死後、シュープリームスのメインヴォーカルのダイアナ・ロスがカバーして、これまた大ヒットしている。その後、男女デュエットの定番ソングとしていろんなバージョンが生まれた。

                      「高くて登れない山なんてない/深くて恐ろしい谷も怖くない/広すぎる川だろうと渡れるんだ/君に届く距離にいるためなら何だってするよ、ベイビー」(訳詞:サトウムツオ)

                      つまり「人生にある山や谷や川があっても、怖くない」と歌う歌で、混沌とした1960年代にアメリカ国民全体へ勇気を与えた、最高にゴキゲンな歌だった。
                       
                      このマーヴィン・ゲイ/タミー・テレルバージョンの曲は映画との相性も良く、いろんな映画にも使われている。ビル・デューク監督の『天使にラブ・ソングを2』(1993年)のエンディング(これは、ダイアナ・ロス版とのミックスバージョンだった)ではウーピー・ゴールドバーグ、ローリン・ヒル、マイクル・ジェッターといった修道院の音楽クラスの聖歌隊の教師と生徒が歌うし、クリス・コロンバス監督の『グッドナイト・ムーン』(1998年)では劇中歌としてジュリア・ロバーツ、スーザン・サランドン、ジェナ・マローンらが流れるラジオの音やレコードの音に合わせて、継母と前妻と2人の子どもが口パクでハシャイでが歌うし、ロリ・ベティ監督の『早熟のアイオワ』(2008年)ではエンディングで姉妹役に扮したジェニファー・ローレンス、クロエ・グレース・モレッツがカーラジオから流れる曲に合わせて口パクで歌っているのだ。このように、この曲には家族やクラスやチームメイトを団結させてひとつにする不思議な力があるようだ。

                      マーベル・コミックが製作したディズニーのスーパーヒーロー映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)でも、主題歌のような使われ方をしている。主人公スターロード、ピーター・クイル(クリス・プラット)の母の形見のテープ(SONYの初代ウォークマンで聴けるテープだ)として、おかあさんの青春時代を代表する1970年代の楽曲として使われていた。

                      | mou1234 | 21:52 | comments(0) | - |
                      7.『勝手にしやがれ』(1959年)×モーツァルト「クラリネット協奏曲」
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                        1959年のジャン=リュック・ゴダール監督の長編デビュー作『勝手にしやがれ』(原題À bout de souffle)は仏ヌーヴェルヴァーグの記念碑的作品で、ジャン=ポール・ベルモンドとジーン・シバーグが主演している。

                        フランスのマルセイユで自動車を盗んだミッシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)は追ってきた警官を射殺する。パリにたどり着いた彼は、アメリカ人のガー ルフレンド、パトリシア(ジーン・シバーグ)と行動をともにする。ハンフリー・ボガートを気取って何かの映画のボガートの仕草を真似て、唇を親指でなぞる 仕草をするミッシェルは相当なボガートファンらしい。だが、パトリシアはミッシェルが警察に追われる身であることに気づいてしまう。やがて心変わりしたパ トリシアが警察に密告してしまう。警察の銃が火を吹く。ミシェルは背中を撃たれ、よろめきながら大通りにたどり着き、前のめりになって倒れる。「俺は最低 だ」とミシェル、「最低って何のこと?」とパトリシアがボガートの真似をして唇を親指でなぞり、そうつぶやいて終わる。

                        パリのシャンゼリゼ通りで『ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン』紙の売り子をしていて、その新聞社の黄色いTシャツ(映画は白黒映画であり、白黒映画での発色がいいので黄色が使われた)を着て登場するジーン・シバーグが圧倒的に可愛い。髪はオットー・プレミンジャー監督の『悲しみよこんにちわ』(57年) から抜け出たようなベリーショート「セシルカット」で、大柄なストライプのワンピースを着たり、完全にファッションアイコンとなっている。

                        このジャン=ポ=ル・ベルモンドが演じるミシェル・ポワカールの生き様が刹那的でたまらなく好きだ。彼が愛した女のパトリシアは曖昧な欲望しか持てぬプチブルジョアで、実はつまらない女であった。ここが悲しい。彼女を愛したがゆえに彼は死ぬ運命にある。

                        ゴダールは1960年に、仏『ル・モンド』紙のインタビューに次のように答えている。
                        「私は、トリュフォーの主題から出発してアメリカ女とフランス男の話を物語ったわけです。ふたりの仲はうまくいかない。男のほうは死について考えているのに、女のほうは死なんか考えないからだ。私はこのアイデアを持ちこまない限り、映画がおもしろくなるわけがないと思った。青年の方はかなり前から死ぬことばかり考えている。死ぬことを予感している青年。そういう考え方から、青年が街頭で事故死を目撃するシーンを撮った。同じ理由で、レーニンの言葉、《われわれは賜暇中(官吏などが願い出て休暇を許可されること)の死者である》を引用し、モーツアルトが死の直前に書いた「クラリネット協奏曲」を使っています」

                        この映画で逃避行をしていた2人はアントニオ(アンリ=ジャック・ユエ)という友人の紹介で女の家に行き、そこを隠れ家とする。その隠れ家で、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの「クラリネット協奏曲」をレコードでかけて、主人公ミシェルに「好きだ」とまでいわせているのだ。

                        「クラリネット協奏曲イ長調K.622」はケッヘルの番号が大きいことからも分かるように、死期の近いモーツァルト最晩年の、1771年に作曲されたクラリネットと管弦楽のための協奏曲だ。ケッヘルの比較的大きい「レクイエムニ短調K.626」や「歌劇『魔笛』K.620」と比較すると、そこに死の匂いをまとっていることが分かるはずだ。モーツァルトの「クラリネット五重奏曲イ長調K.581」と同様に、当時ウィーン管弦楽団のクラリネットとバセットホルン の名手だったアントン・シュタードラーのために作曲したもので、低音が出せるバセット・クラリネットのためにと作曲された。今の楽譜では、A管クラリネットによって演奏できるように、何者かが編曲したものだ。

                        『勝手にしやがれ』では、3楽章あるうち第2楽章などが使われていた。簡素で味わい深く、比類なく美しいメロディは、デンマークの作家イサク・ディネセン の小説『アフリカの日々』の映画化で、シドニー・ポラック監督、メリル・ストリープ&ロバート・レッドフォード共演のアカデミー賞7部門受賞作『愛と哀しみの果て』(85年)のアフリカの情景と実にマッチしていた。

                        | mou1234 | 21:46 | comments(0) | - |

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